食欲が落ちてきた。水をあまり飲まなくなった。いつもより眠っていて、呼びかけてもふらっとしか起きてこない。——そんな変化に気づきながら、「もしかして」と不安になっている…
老猫の体は、最期が近づくにつれて少しずつ変化していきます。その変化のサインを知っておくことは、「気づかなかった」という後悔を減らし、そばにいるための時間を整えることにつながります。
この記事では、老猫に見られやすい最期のサインと、そのときにそばでできることをまとめました。
老猫に起きやすい最期のサイン
猫はもともと弱みを隠す動物です。体の変化が外から見えにくいことが多く、「急にわかった」と感じる方も多いのですが、よくよく振り返ると小さなサインがいくつも重なっていたことに気づくことがほとんどです。
以下のような変化が続いているとき、体が弱ってきているサインかもしれません。一つひとつは小さく見えても、いくつか重なってきたら、丁寧に見ておきたいところです。
食欲と水分の変化
最初に気づきやすいのが、食欲の変化です。大好きだったご飯に近づかなくなる、少し食べてすぐ離れてしまう、という状態が続くようになります。水もあまり飲まなくなることがあります。
腎臓の機能が落ちている時期は、水を大量に飲んでいた子が、その後まったく飲まなくなるという経過をたどることもあります。「食欲がないだけかな」と思っているうちに、数日で急速に体力が落ちることもあるため、食欲の変化は体全体のサインとして受け取ってほしいことのひとつです。
ひとりで隠れるようになる
猫は最期が近くなると、押し入れの中・ソファの下・クローゼットの隅など、薄暗くて狭い場所に入り込もうとすることがあります。弱った自分を守ろうとする、本能的な行動といわれています。
「どこに行ったの」と探し回ることが増えてきたなら、それもひとつのサインかもしれません。完全にひとりにしてしまわず、気配を感じられる距離でそっと見守ることが、その子の安心につながることが多いです。
呼吸と体温の変化
いつもより口を開けて呼吸していたり、お腹が大きく動くようになったりしたとき、体に負担がかかっているサインです。また、手足や耳の先など末端部分が冷たくなることも、体力が落ちているときに見られます。
猫は年齢とともに体温調節が難しくなります。特に気温の低い季節や夜間は体が冷えやすいため、環境を整えてあげることが大切です。
毛並みと表情の変化
猫は自分でグルーミングをする動物ですが、体のエネルギーが落ちてくると、それをしなくなることがあります。毛がパサつく、乱れたままになる——そんな変化も、体全体が弱ってきているときに現れやすいサインです。
また、眼がうつろに見える、目に力がなくなる、動きがゆっくりになる——表情の変化は言葉にしにくいけれど、いつもその子を見てきた人には伝わります。夜に大きな声で鳴くようになる子もいます。「いつもと違う」という感覚を、大切にしてください。
サインを見たとき、まずしてほしいこと
「気になる変化があるかな」と思ったとき、まず確認してほしいのはかかりつけの獣医師への相談です。
体の不調からくるサインと、老いからくるサインはよく似ています。痛みや苦しさがある状態で過ごさせていないか、何か対処できることがあるか——その判断は、プロでないと難しいことがほとんどです。「もう高齢だから仕方ない」と受診をためらわず、気になることをひとつ聞いてみる、という姿勢でいてほしいと思います。
猫が苦しんでいるかどうかの目安として、多くの獣医師が挙げるのは「呼吸の乱れ」「じっとしていられない様子」「声をあげる」などです。逆に、静かに眠るような状態が続いているなら、大きな苦しさなく過ごせていることも多いとされています。判断が難しいときは、ひとりで抱えず獣医師に相談することをおすすめします。「こんなことを聞いてもいいのかな」という遠慮は不要です。
体のことで不安があれば、何度でも確認しに行っていい。そう思ってもらえたら、と思います。
最期の時間、そばでできること
「何かしてあげたいのに、何もできない」と感じる方は多いと思います。でも、そばにいること自体が、その子の安心になっています。
環境として整えてあげたいのは、温かさを保つことです。老猫は体温調節が難しくなっていくため、毛布や湯たんぽでやさしく温めてあげると楽に過ごせることがあります。ただし直接あたりすぎないようにしてください。柔らかいクッションや毛布の上など、体が沈み込みやすい場所を作ってあげると、長時間横になっていても負担が少なくなります。
ご飯や水は、無理に食べさせようとしなくて大丈夫です。食べられなくなることは、体の自然な変化のひとつです。スポイトや指先で少量の水を口の端に含ませてあげたり、口まわりを湿らせてあげるだけでも、乾燥からくる不快感を和らげることができます。
そして——声をかけてあげてください。名前を呼ぶ。「ここにいるよ」と伝える。反応が薄くなっていても、音や気配は伝わっているといわれています。抱きしめたいときは、体に負担のかからないよう、そっと手を添えるだけで十分です。
「もっとできることがあったんじゃないか」と後から悔やむ方は多いです。でも、完璧にできなくても大丈夫。そばにいようとしたこと、その気持ちはきちんと届いています。
お別れのことを、少しだけ想像してみること
「今はまだ考えたくない」という気持ちはそのままでいいと思います。ただ、最期が近いかもしれないと感じたとき、少しだけ頭に置いておくことが後から助けになることがあります。
どんなお見送りにしてあげたいか。お家でそばにいてあげるのか、葬儀社に頼むのか。棺に何を入れてあげようか——そういうことを、急かされずにぼんやりと思っておくだけでいいです。
好きだったブランケットのにおい、毛のやわらかさ、よく眠っていた場所の写真。残しておきたいものを思いつくままにそっとしまっておくことを、「してよかった」と後で感じる方が多いようです。


