年を重ねたり病気で弱ったりした犬や猫のそばで、「このまま家で看取ってあげられるかな」「何を用意しておけばいいんだろう」と迷うことがあります。家での看取り方として、まず整えたいのは寝床、床の滑り止め、室温、水とトイレの位置。苦しそうな様子があればすぐ相談できるよう、夜間や休診日の連絡先も、かかりつけの動物病院に確かめておきます。
家で過ごしたいことと、獣医師に相談することは両立します。痛みや吐き気、水分のとり方を相談しながら、家で支える形もあります。この記事では、住まいの整え方と日々の介助、最期が近いときに見られる変化、その時間にそばでできることを順にまとめます。もう今夜かもしれない、と感じているなら、先に下の「最期の時間に、そばでできること」から読んでください。
寝床と通り道は、できるだけ負担の少ない形に整える
寝床・床・寝具・室温の4つを、その子の今の体に合わせて見直していきます。
寝床は「見守りやすさ」と「落ち着きやすさ」の両方を意識する
寝床を整えるときは、その子が落ち着けることに加えて、ご家族が様子を見やすいことも大切です。食事や水分の介助がしやすく、トイレの世話もしやすい場所のほうが、ご家族の負担も軽くなります。
エアコンの風が直接当たりにくく、暑すぎず寒すぎず、音や人の出入りが激しすぎない場所だと、休みやすい子もいます。以前からその子がよく過ごしていた場所があるなら、そこを基準に整えていくのもひとつの方法です。
来客や配達のチャイムで眠りを妨げないようにする工夫も、静かな環境づくりのひとつです。

滑りやすさや段差は、早めに見直しておく
足腰が弱ってくると、床の滑りやすさや少しの段差も負担になります。立ち上がるときに足が開く、歩き出しをためらう、向きを変えにくそうにする、といった様子が見えてきたら、床や通り道を整えてあげたいサインです。
- フローリングには滑り止めマットやラグを敷く
- よく通る場所の段差を減らす
- ソファやベッドに上がる習慣がある場合は、無理のない高さの補助を考える
寝たままの時間が増えたら、寝具と体勢にも気を配る
体が弱ってくると、横になっている時間が長くなることがあります。その場合は、薄い敷物よりも、ある程度厚みがあり、体をやさしく支えやすい寝具を選ぶと、その子も休みやすくなるかもしれません。
また、同じ向きで長く寝ていると、一部の皮膚や関節に負担がかかりやすくなります。無理のない範囲で体勢をそっと変えたり、皮膚が湿ったままにならないようにしたりして、できるだけ清潔で乾いた状態を保ってあげたいところです。
室温は、人の感覚だけで決めすぎない
年齢を重ねると、自分で体温を調節しにくくなる子もいます。飼い主さんが立っている位置では快適でも、床に近い場所は思ったより冷えていたり、熱がこもっていたりすることがあります。
- 寝ている場所の高さで暑さ寒さを確認する
- ブランケットやタオルで細かく調整する
- エアコンやヒーターの風が直接当たらないようにする
- 自分で移動できる子なら、少し暖かい場所と少し涼しい場所を選べるようにする
食事・水分・排泄のケアは「つらくないこと」を大切に
食べる量や排泄の失敗だけを見るのではなく、その子がつらくないかを見ながら、その日ごとに調整していきます。
食欲が落ちたら、まず不快感がないかを獣医師に相談する
食欲が落ちてくると、どうしても「何とか食べてほしい」と思うものです。ただ、看取り期(最期が近づいてきた時期)の食欲低下は、単なる好き嫌いではなく、痛み、吐き気、口の違和感、飲み込みづらさ、呼吸のしづらさなどが関係していることもあります。食べ方の工夫だけで何とかしようとするより、まずは不快感を減らせる方法がないか、獣医師に相談してみるのが先です。
食べられるうちは、その子が受け入れやすい形に寄せていく工夫が役立つことがあります。
- やわらかいフードやウェットフードにする
- 少し温めて香りを立てる
- 器の高さを調整し、首や背中に負担がかかりにくい姿勢にする
- 一度にたくさんではなく、少量ずつ回数を分ける
無理に食べさせないほうがよい場面もある
食べてほしい気持ちは自然ですが、食事そのものがつらい時間になってしまうと、かえって負担が大きくなることがあります。口元に持っていくと強く嫌がる、飲み込みにくそうにする、むせる、飲み込めず口からこぼれる、といった様子があるときは、無理をさせないであげたいところです。
特に、横になったまま無理に口に入れるのは避けてあげたいところです。むせて、気管に入ってしまうことがあります。口に入れること自体が負担になる段階では、口元を湿らせるなどのケアも含め、獣医師に相談できます。食事や水分の介助に不安があるときも、早めに相談を。
水とトイレは、休む場所の近くに
体力が落ちてくると、水を飲みに行く動作そのものや、トイレまでの距離が負担になります。水皿は休む場所の近くにも置き、首を下げにくそうなら器の高さを調整します。トイレも、犬なら通り道の滑り止め、猫なら出入りしやすい低いトイレに。急に変えると戸惑う子もいるので、様子を見ながら少しずつ。
おむつやシートを使うときは、皮膚と口元の清潔も
自力で排泄の場所まで行けなくなってきたら、おむつや吸水シートを使うこともあります。濡れたままの時間が長くなると、皮膚の赤みやただれにつながることがあります。
- 排泄後はなるべく早めに取り替える
- 汚れた部分はやさしく拭く
- 必要に応じてぬるま湯で流し、しっかり乾かす
- 赤みや湿りが続かないか確認する
強くこすると刺激になるので、こすって落とすより、そっと押さえるように拭きます。ウェットフードのあとは、口元も軽く拭いておきます。
最期が近いときに見られる変化と、相談したいサイン
最期が近いときの変化は、その子によって違います。少しずつ弱っていく子、静かに眠るように亡くなる子、呼吸の変化や体の動きが出る子。猫は具合の悪さを表に出しにくい動物で、病気によっては目立った前兆がないまま急に亡くなることもあります。
最期が近づくと見られることがある変化
次のような変化が、いくつか重なってくることがあります。ひとつだけで「もうすぐ」と決めつけず、まだ手当てできる変化かもしれない、と考えておきたいところです。とくに呼吸が苦しそうなら、下の「『苦しいのかな』と感じたら」の節も見てください。
- ごはんを食べない、水をほとんど飲まない
- 寝ている時間が長くなり、起き上がれない
- 呼吸が速い・浅い、間があく
- 足先や耳が冷たく感じる
- 目に力がなく、呼びかけへの反応が薄い
- 静かな場所に隠れたがる
- トイレが間に合わない、失禁が増える
猫が物陰に隠れるのは、具合が悪いときに一人で休もうとする習性だと説明されています。反対に、家族のそばに来たがる子もいます。隠れることだけで最期が近いとは決められません。その子が選んだ場所へこちらから様子を見に行き、呼吸が苦しそうなら動物病院へ連絡します。
老犬・老猫それぞれの最期のサインは、こちらで詳しくまとめています。


「苦しいのかな」と感じたら、迷わず相談を
なかでも呼吸の変化は、見逃したくないポイントです。
- 呼吸がいつもより速い
- 口を開けて、体全体を使って苦しそうに呼吸している
- 横になると苦しそうで休めない
- 首を伸ばすような姿勢が増える
- 痛がって鳴く、落ち着かず何度も体勢を変える
- けいれんのような動きが続く
こうした様子があるときは、家で様子を見ずに動物病院へ連絡したい場面です。嘔吐や下痢が続く、急に反応が鈍くなる、といった場合も同じです。まず連絡し、可能なら様子を動画に撮って獣医師に見せる方法もあります。
見ている側が「苦しそう」と感じたときは、その直感を軽く扱わないこと。自宅で看取るのか、痛み止めなどで苦しさをやわらげるのか、どこまで治療を続けるのか。そこは、かかりつけの獣医師と一緒に考えてもらってよいところです。
最期の時間に、そばでできること
最期の時間が近づいてくると、「もっと何かしてあげないと」と思うかもしれません。呼吸が苦しそう、けいれんが続くときは、まず動物病院へ連絡を。そばにいる、いつもの声で呼ぶ。そんな静かなことも、その場でできることです。
名前を呼んで、体に手を添える
そばにいること。いつもの声で名前を呼ぶこと。寒そうなら毛布をそっと掛け、嫌がらなければ体に手を添えること。反応が薄くても、声や触れ方、気配に反応することがあります。
ずっと付き添えなくても大丈夫です。できる範囲で様子を見に行く、声をかける、家族で交代しながらそばにいる、それだけでも意味があります。
息を引き取るとき、体に起きること
最期のときには、大きく息を吸うような呼吸をしたり、手足がぴくっと動いたり、のどから声のような音が漏れたりすることがあります。力が抜けて失禁することや、目が開いたままになることもあります。
見ていてつらい場面ですが、こうした動きは、意識がない中での体の反射だと説明する獣医師もいます。心配なときは獣医師に連絡を。そばでは名前を呼び、嫌がらなければそっと手を添えてあげてください。
息を引き取る前から、けいれんや落ち着かない様子が続くときは、苦しさがあるかもしれません。その場合は、上の「苦しいのかな」の節のとおり獣医師へ。息を引き取る前後の短い動きと、分けて考えます。
呼吸が止まったように見えたら
呼吸が止まったように見えても、それだけで亡くなったとは決められません。胸やお腹の動き、名前を呼んだときの反応を見ます。反応があるとき、迷うときは、かかりつけの動物病院に連絡してください。見た目だけでは判断しきれないことがあります。
最期を見届けたあと、「もっと早く気づけたかもしれない」「苦しかったのでは」と感じることがあります。けれど、弱っていく子のそばで過ごす時間は、どれだけ準備していても迷いの連続です。完璧にできたかどうかより、その子のそばにいようとした時間のほうを、大切にしてもらえたらと思います。
看取ったあとの安置や、その後にやることは、亡くなった直後の流れとチェックリストにまとめています。

このあと何をすればいいのか、順番が分からなくなったときは、看取りから火葬・供養・手続きまでの流れを「ペットのお見送りガイド」に時系列でまとめています。必要なところだけ、開いてみてください。
参考にしたページ・資料
呼吸が止まったように見えたとき … アニコム損保「どうぶつのターミナルケア(11)」・ペトリィ「犬が動かなくなったとき。犬の死亡確認方法と仮死状態との見分け方」(監修:増田国充獣医師)



