玄関チャイムが鳴るたびに、愛犬が大きく吠える。びくっと飛び起きる。そわそわして落ち着かなくなる。そんな悩みは、意外とよくあるようです。
しかも、反応のしかたはワンコによってかなり違います。大きな声で吠える子もいれば、固まる子、玄関のほうをじっと気にする子、息が荒くなる子もいます。見ているこちらとしても、「ただ元気なだけなのかな」「怖がっているのかな」と迷うことがありますよね。
この記事では、チャイムをはじめ音に敏感な犬にできる対策を、一般に紹介されている考え方をもとに整理してみます。すぐ取り入れやすい環境づくりから、無理のない練習の考え方まで、できるだけわかりやすくまとめました。
なお、チャイムに限らず、工事の音や雷、掃除機の音など、生活音全般に敏感な子もいます。ここで紹介する考え方は、そうした場合にも応用しやすいかもしれません。
犬が玄関チャイムに反応しやすいのは、音だけが理由ではないようです
犬がチャイムに反応する理由は、「大きな音が苦手だから」だけではありません。
チャイムのあとには、誰かが来る、ドアが開く、家族が立ち上がる、玄関の空気が変わる、という流れが続きます。そのためワンコによっては、チャイムの音そのものというより、「このあと何か起きるぞ」という一連の出来事をまとめて覚えていることがあります。
ドアベルのような音は、犬にとって不安にも興奮にもつながりやすい刺激のひとつです。来客があまり得意ではない子は警戒して反応しやすく、人が好きな子はうれしくてテンションが上がってしまうこともあります。
なので、チャイム対策は「音量だけ下げれば解決」というより、音の前後に起きる流れごと見直すほうが合っているケースも多そうです。
生後6か月ごろの若い犬が吠えることも
生後6か月ごろでも、チャイムや来客に吠える子はいます。子犬には生後3〜12週ごろ、人や物音に慣れやすい時期(社会化期)があり、そのあとも、初めての人や音には慎重になることがあります。
子犬を迎えたばかりの時期の来客の迎え方は、子犬・子猫を迎えたばかりの時期、来客をどう迎えるかの記事にまとめています。
まず見ておきたいのは、「びっくり」なのか「警戒」なのか
対策を考えるとき、最初に少し見ておきたいのが、その子の反応がどちらに近いかです。
チャイムが鳴った瞬間に飛び上がる、耳を伏せる、後ずさる、震えるような様子があるなら、音に対する驚きや不安が強いのかもしれません。一方で、玄関へ走る、吠え続ける、落ち着かない、来客のあともしばらく高ぶっているようなら、警戒や興奮が混ざっていることもありそうです。
もちろん、きれいにどちらか一方に分かれるとは限りません。実際には、「びっくりもするし、警戒もしている」という子もいます。だからこそ、「うちの子はどっち寄りかな」とざっくり見るだけでも、対策の方向が少し決めやすくなります。
チャイムも鳴っていないのに、玄関のほうをじっと見つめている。犬は人より小さな音や高い音まで聞き取れるので、外の足音や車の音など、こちらが気づく前の気配を拾っていることもあります。
配達の車が止まる音のあとにチャイムが鳴る、と覚えていて身構えている子もいれば、家族の帰りを待って玄関を見ている子もいます。
まずは「鳴る回数」と「刺激の強さ」を減らすところから
チャイムが鳴る回数そのものを減らしてみる
いちばん現実的で取り入れやすいのは、まずチャイムの回数を減らすことかもしれません。
宅配が多いご家庭なら置き配を使う、配達メモを見直す、予定がわかっている来客には事前にメッセージをもらう。そういう小さな工夫だけでも、「今日も何回も鳴ってしまった」という状態を減らせることがあります。
練習に慣れるまでは、こわい音やワクワクしすぎる音を、できるだけ減らしておくのが近道になりやすいです。毎回本番が起きる状態だと、ワンコも飼い主さんもなかなか落ち着いて取り組みにくいですよね。
チャイム音を変えられるなら見直してみる
機種によっては、音量やメロディを変えられることがあります。高くて鋭い音よりも、少しやわらかい音のほうが反応しにくい子もいるようです。
もちろん、すべてのワンコに同じように合うとは限りません。ただ、「あの音が鳴るたびに毎回びくっとしている気がする」という場合は、一度見直してみる価値はありそうです。
音を少しやわらげる工夫も
テレビや音楽、ホワイトノイズなどで急な音を少し和らげる方法も、よく紹介されています。雨音や波の音のような「環境音」を、小さく流しておく方法もあります。これだけで根本解決になるわけではありませんが、チャイム音が刺さるように入ってくる感じを少し和らげられることはあるようです。
特に、玄関とリビングが近いおうちや、室内によく音が響く間取りでは、こういう小さな工夫が案外助けになることがあります。
落ち着きやすい音として試しやすいのは、ゆったりした音楽や、テレビ・ラジオのような聞き慣れた音です。保護施設の犬に音楽を聞かせた調べでは、立ったまま過ごしたり吠えたりする時間が減った一方、同じ曲ばかりだと早くて1日ほどで慣れてしまったそうです。
音量は控えめに、曲はときどき入れ替えるのがコツです。かえってそわそわするようなら、その子には合っていないので、止めてあげてください。
犬が落ち着ける「逃げ場」を先に作っておく
チャイム対策では、吠えたあとに何とかするより、先に安心できる場所を用意しておくほうが進めやすくなります。クレート、サークル、ベッドのある一角、少し静かな部屋。その子が落ち着きやすい場所を決めておくと、反応が出たときにも立て直しやすくなります。
「また鳴いた」「また玄関へ走った」とその場で慌てるより、いつでも戻れる定位置があるだけで、家の中の空気が少し変わることがあります。
玄関から少し距離のある場所に、安心できる居場所を作っておく。それだけでも、毎回最前線に立たなくてすむようになる子はいるようです。
「静かに」と言いたくなったときは
吠えると、つい「だめ」「静かに」と言いたくなることがあります。近所のことも気になるし、何度も続くとこちらも余裕がなくなりますよね・・・。
ただ、強い声が続くと、ワンコは「チャイムが鳴ると、こわいことが増える」と感じてしまうことがあります。いったん静かになったように見えても、次はもっと大きく吠えたり、隠れたり、思わずかんでしまったりすることもあるようです。
「早く慣れてくれたら」と何度もチャイムを鳴らすのも、音が強すぎたり急ぎすぎたりすると、かえってこわさが増えるようです。「慣れてほしいのに、前より敏感になってしまった気がする」と感じるときは、少しやり方を見直したほうがよいかもしれません。
吠えが治らないときは、理由と体調を見直してみる
いろいろ試しても吠えが治らないときは、吠える理由と工夫がかみ合っていないこともあります。外の気配を見張る警戒なのか、来客がうれしくて興奮しているのか、怖さや不安なのか。見分けるときは、上の「びっくり」か「警戒」かの見方が使えます。
体のどこかが痛い、具合が悪いといった不調を訴えて吠えていることもあります。急に吠え方が変わったときは、まず動物病院で診てもらってください。
チャイムの音は、平気でいられる「小さな音」から少しずつ
長い目で見て、チャイムにびっくりしにくくなるように、小さい刺激から少しずつ慣れていく方法がよく紹介されています。
たとえば、録音したチャイム音などを、犬がまだ平気でいられる小ささで流して、そのタイミングでおやつや落ち着ける行動を組み合わせる。そうやって、「この音がしても大丈夫」と少しずつ学んでもらう考え方です。
ここで大事なのは、すでに緊張している強さで始めないことです。震える、食べない、固まる、逃げたがるなら、その刺激は強すぎるのかもしれません。練習は、短く、無理のない範囲で終えるほうが続けやすそうです。
「別の行動」を用意しておくと進めやすい
ただ我慢してもらうより、チャイムが鳴ったらマットへ行く、ハウスに入る、おやつを探す、という流れを先に作っておくと進めやすいと言われています。
これは、チャイムが鳴ったときにできることを、先に用意してあげるイメージです。ワンコにとっても、「どうしたらいいかわからない」より「こっちをすればいい」があるほうが、少し気持ちがラクかもしれません。
来客対応の流れをそろえると、反応が軽くなることも
チャイムが鳴った瞬間に家族がバタバタ動くと、その空気につられて犬も高ぶりやすい、と言われることがあります。
毎回の流れをなるべくそろえる。まず犬を定位置に誘導する。玄関対応は一人が静かに行う。こうした形にすると、犬にとって先が読みやすくなりやすいようです。
予定がわかっている来客なら、呼び鈴ではなくメッセージや電話で知らせてもらうのも、かなり現実的です。知っている来客に協力をお願いできるなら、最初から犬に声をかけない、急に近づかない、落ち着くまでは玄関で待つ、といった配慮も役立つことがあるようです。
玄関サインやマグネットは、外側からできる工夫

ここで、玄関サインやマグネットサインも役に立ちます。
置き配希望や、チャイムを控えてほしいことが玄関でわかるようになっていると、配達員さんや来客が配慮しやすくなります。もちろん、すべての人に必ず伝わるとは限りません。それでも、何も表示がないよりは、「鳴らさなくていい理由」が伝わりやすくなることはありそうです。
こうしたサインは、練習が進むまでのあいだ、チャイムでびっくりする回数を減らしてあげるための工夫です。家の中だけでなんとかしようとするより、外側でも少し負担を減らせたほうが、飼い主さんも気持ちがラクになりやすいですよね。

チャイム以外の音に敏感な子にも、同じ考え方が使えます
雷や花火、掃除機、工事の音。チャイムに限らず、生活音が苦手な子もいます。以前は平気だったのに急に音に敏感になったなら、体調や年齢の変化が隠れていることもあるので、続くようなら一度診てもらうと安心かもしれません。
進め方は同じです。まず刺激を減らし、逃げ場を作り、平気でいられる小さな音から少しずつ。掃除機なら別の部屋で待ってもらう、雷ならカーテンを閉めてテレビをつけておく。そんな小さな工夫から始めるほうが続けやすそうです。
夕方5時のチャイムやサイレンで、遠吠えする子も
夕方になると町に流れる防災無線のチャイムや、救急車のサイレン。そのたびに「ワオーン」と遠吠えする子もいます。高く長く伸びる音が犬どうしの遠吠えに似て聞こえて、つい返事をしている——そんなふうに言われています。毎日同じ時間に歌い出すの、ちょっとかわいいですよね。
怖がっている様子がなく、音が止んだらけろっとしているなら、そのまま歌わせてあげていいと思います。ご近所が気になるときは、その時間だけ窓を閉めておく、鳴る少し前からおやつや遊びで気をそらしておく、といった工夫で様子を見てみてください。震える・隠れるなど怖がっているようなら、上の「小さな音から少しずつ」の考え方が役に立ちます。
サイレンに限らず、遠吠えには、離れた仲間に自分の居場所を知らせる、かまってほしい気持ちを伝える、といった意味もあります。お留守番のあいだずっと続くなら、心細さのサインのこともあります。急に遠吠えが増えたときは、体調の変化が隠れていないか、動物病院で一度相談してみてください。
こんな様子があるなら、早めに相談してもよさそうです
チャイムへの反応がかなり強いときは、家庭だけで抱え込まないほうが安心なこともあります。
たとえば、震える、息が荒い、よだれが増える、逃げようとする、隠れたまま出てこない、おやつも食べられない。あるいは、来客がない日まで物音に敏感になっている。そうした様子があるなら、不安や恐怖がかなり強い可能性も考えられるようです。
警戒吠えがいつまで続くかは、その子の性格や年齢、これまでの経験によって違います。成長とともに落ち着いていく子もいれば、吠える習慣がついて、そのまま続く子もいます。
刺激を減らす工夫や練習をしばらく続けても変わらない、前より強くなっている気がする。そんなときも、専門家の力を借りるタイミングです。
そういうケースでは、獣医師さんや行動面を見ている専門家に相談しながら、環境調整や練習を組み立てたほうが進めやすいこともあるようです。「うちだけでなんとかしないと」と思いすぎなくて大丈夫です。
まとめ:チャイムや物音への対策は、「鳴った後」より「鳴る前」を整えるほうが進めやすいようです
犬が玄関チャイムの音に敏感なときは、音量や音の種類、鳴る回数、安心できる場所、来客時の流れなど、見直せるポイントがいくつもあります。
大切なのは、まずびっくりする回数を減らしてあげて、そのうえで小さな音から少しずつ平気になっていけるようにすることなのかもしれません。玄関サインやマグネットサインも、その流れの中ではかなり実用的な工夫として取り入れやすそうです。
「また吠えちゃった」「すぐに反応してしまって、こちらも疲れてしまう」そんな日が続くと、飼い主さんもしんどくなりますよね。
でも、急に完璧を目指さなくても大丈夫です。その子が少しでも落ち着いていられる条件を先に整えていくこと。それが、いちばん無理が少なく、続けやすいやり方なのではないかと思います。

参考にしたページ・資料
子犬の社会化期 … 広島県動物愛護センター・環境省
音楽で犬が落ち着くか … グラスゴー大学の研究(2015年)



