うちの子が帰ってこない夜。いつもいる場所が空いているのを見ると、何でもいいから、できることをしたくなりますよね。
猫が帰ってくるおまじないとして伝わるのは、百人一首にもある「立ち別れ」の歌です。ただ、歌を書くより先にしておきたいのが、家の中を探すことと、いなくなった地域の窓口への連絡です。歌のことは、探しながら気持ちを支えるものとして、このあと紹介します。
まず、探すことと連絡を
いなくなったら、すぐに探し始めることが大事です。外に出たと思っても、猫が家の中に隠れていることがあります。まずは室内を、もう一度見てみてください。
家の中で見つからなければ、次に探したいのは、家の周りの物置や室外機の下のような、狭くて暗い所です。
探すのと同じくらい大事なのが、いなくなった地域の保健所、動物管理センター、交番、動物病院への連絡です。知らせを待たずに、飼い主から問い合わせるよう案内している窓口もあります。市区町村の境目が近かったり、遠くまで行っていそうだったりするときは、隣の市区町村の窓口にも伝えておけると心強いです。連絡したあとも、間をあけすぎずに、ときどき自分から問い合わせてみてください。
マイクロチップを入れている子なら、登録した電話番号と住所が今のものかも確かめておけると安心です。保護されたときの知らせは電話で来るので、着信にも気づけるようにしておけるといいですね。帰ってきたあと、玄関からまた出てしまわないための工夫は、こちらにまとめています。

「立ち別れ」の歌とは?
「立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」。小倉百人一首の16番、中納言行平こと在原行平(ありわらのゆきひら)の歌です。もとは『古今和歌集』の、別れの歌を集めた巻に入っています。
意味を今の言葉にすると、「あなたと別れて因幡へ行っても、あなたが待っていると聞いたなら、すぐに帰ってこよう」。
この歌は、ひとつの言葉に二つの意味を重ねています。「いなば」は地名の因幡と、「行ってしまったら」という意味の「往なば」。「まつ」は山の松と「待つ」。離れても、待つ声が届けば帰りたいという歌です。
鳥取県の解説では、行平が因幡、いまの鳥取県東部へ赴任するときの歌として紹介されています。ただ、歌集の前書きは「題しらず」で、詠んだ場面までは書かれていません。
猫の歌ではありませんが、「待っていると聞いたら帰る」という言葉に、帰りを待つ人が願いを重ねたのかもしれません。
猫が帰ってくるおまじないは、歌を書いて貼る言い伝え
1927年の『石川県石川郡誌』には、飼い猫がいなくなったとき、この歌を書いて猫の食事の場所に貼っておくという話が記されています。金沢にも、歌を紙に書いておくと猫が帰ってくると言われていた、という記録があります。どちらも、その土地で語られた言い伝えです。
長崎県の旧亀岳村では、歌を半紙に墨で書き、玄関口に逆さまに貼るという話が、1972年に出た民俗調査の記録に残っています。貼る場所は、土地によって違っていたようです。確かめられた記録は、どれも迷い猫の話です。
歌を書いたから帰ってくる、とは約束できません。それでも、書いているあいだは少し気持ちが落ち着くかもしれません。猫のごはんを置く場所のそばに貼って、「待ってるよ」と思うのもひとつです。
猫返し神社に願いをかける人も
東京都立川市の阿豆佐味天神社(あずさみてんじんじゃ)・立川水天宮の境内には、蚕影神社(こかげじんじゃ)というお社があります。「猫返し神社」と呼ばれ、猫が帰ってきたという報告も神社に寄せられています。遠くに住む人には、猫の絵馬の郵送も案内されています。
お参りや絵馬の郵送を考えているなら、先に神社の公式の案内を見ておくと安心です。神社のことは、こちらの記事でも紹介しています。

まとめ:歌は気持ちの支えに、探す手は止めずに
まだ連絡していない窓口があれば、今日のうちに、まず一本、電話をかけてみてください。
帰ってきたら、迷子札を付けている子なら、札の連絡先も一度見直しておきたいですね。


参考にしたページ・資料
いなくなったときの探し方・連絡先 … 環境省「迷子になってしまったら」・東京都動物愛護相談センター
マイクロチップの登録と保護されたときの連絡 … 環境省「マイクロチップQ&A」
「立ち別れ」の歌と、行平の因幡への赴任 … 国際日本文化研究センター(和歌データベース)・鳥取県
迷い猫に歌を貼る言い伝え … 国立国会図書館レファレンス協同データベース(石川県立図書館の回答)・国際日本文化研究センター(怪異・妖怪伝承データベース)
猫返し神社と猫の絵馬の郵送 … 阿豆佐味天神社・立川水天宮




