地震のあと、うちの子がいつもと違う……。震えている、隠れて出てこない、吠え続ける。そんな様子を見ると、「怖いのかな。どうしてあげればいいんだろう」と心配になりますよね。
揺れている間はまず飼い主自身の安全を守り、揺れがおさまったら、周囲の危険と犬・猫の居場所、けがや呼吸の様子を確認しましょう。避難を急ぐ必要がなく、安全な場所にいるなら、無理に抱き上げたり引っ張り出したりせず、落ち着いて過ごせる環境を整えます。
ただし、呼吸が苦しそう、ぐったりして反応が乏しいなどの様子は、「怖がっているだけ」と決めつけず、すぐに動物病院へ相談を。この記事では、地震の最中から直後の接し方、体調の見方、日頃の備えまでを順番に確認できます。
今知りたい内容から読めるよう、次の三つに分けてご案内します。
地震が起きたら、まずは飼い主自身の安全を守る
地震が起きた瞬間、まず大切なのは、飼い主自身の安全を確保することです。
ペットを守りたい気持ちが先に出るのは自然なことです。けれど、飼い主がけがをしてしまうと、その後の避難やお世話が難しくなってしまいます。
揺れている最中に、無理に犬や猫を抱き上げようとしなくても大丈夫です。驚いたペットは、いつもと違う動きをすることがあります。急に走り出したり、隠れたり、抱こうとした手を噛んだり引っかいたりすることもあります。
まずは丈夫なテーブルの下など、物が落ちたり倒れたりしにくい場所で身を守ります。揺れがおさまったら、周囲の危険を確かめながらペットの居場所を確認しましょう。火災や津波などで避難が必要なときは、その場で落ち着くのを待たず、安全な場所への移動を優先します。
地震のあと、犬・猫が怖がる・様子がおかしいときのサイン
犬や猫は、揺れに加えて、食器が落ちる音や家具が動く音、家族の慌てた声などに驚くことがあります。怖がり方はその子によって違い、大きく動き回る子も、じっと動かなくなる子もいます。
以下は、揺れがおさまり、周囲が安全で、避難を急ぐ必要がない場合の接し方の目安です。呼吸や反応の異変があるときは、見守るだけで済ませず動物病院へ連絡しましょう。
| 今の様子 | 接し方・確認すること |
|---|---|
| 飼い主のそばを離れない | 落ち着いた声で短く応じる。触られるのを嫌がったら、手を止める |
| ベッドの下や押し入れに隠れて出てこない | 周囲の危険を確かめ、引っ張り出さず、出てこられる道を空ける |
| 吠える・落ち着きなく歩き回る | 叱らず、人の声や動きを落ち着かせる。慣れた寝床などを使えるようにする |
| 震える・固まって動かない | 怖さだけと決めつけず、けがや呼吸、呼びかけへの反応も確認する |
| 呼吸が苦しそう・猫が口を開けて呼吸している・ぐったりしている | 落ち着くのを待たず、すぐ動物病院へ連絡する |
犬には吠える、歩き回る、飼い主から離れないなどの様子が、猫には隠れる、身を低くして固まるなどの様子が見られることがあります。いつもより声を出さなくなる子もいるため、静かだから平気とは限りません。どちらも、その子の普段の様子と比べて見ていきましょう。
「いつもどおり」は、声と動きを落ち着かせることから
何をしてあげればよいか迷ったら、まずは大勢で取り囲まず、短く穏やかに声をかけるところから。そばへ来る子には落ち着いて応じ、触られるのを嫌がるなら手を止めます。「大丈夫?」と何度も抱き上げたり、隠れ場所をのぞき続けたりせず、その子が安心できる距離を保ちましょう。
慣れた寝床やクレートは、本人が使えるようにしておきます。怖がっているからと急に閉じ込めたり、無理に引っ張り出したりする必要はありません。けがや体調を確認しながら、休める環境を整えることが、今できる接し方の一つです。
揺れがおさまった直後に確認したいこと
揺れがおさまったら、まず火災や津波、建物の損傷など、避難を急ぐ危険がないかを確認します。安全に確認できる範囲で、次の点も見ておきましょう。
- ペットがどこにいるか
- けがをしていないか
- ガラスや倒れた家具の近くにいないか
- 首輪やハーネスが外れていないか
- ドアや窓が開いていないか
- 火災、津波、土砂災害などの危険がないか
地震の後は、玄関や窓がゆがんで開いたままになったり、フェンスが壊れたりすることがあります。外へ逃げ出す危険もあるため、まずは出入口を確認しましょう。
隠れている場所にも、倒れそうな家具や割れたガラスがないかを確認します。静かに見守れるのは、その場が安全で、避難を急ぐ必要がない場合です。危険が迫っているときは、ペットを探すために危険な建物へ入ったり、戻ったりせず、人の安全を優先しましょう。
避難するか、在宅避難するかを考える
地震が起きたら、必ず避難所へ行くとは限りません。
自宅が安全で、火災や津波、土砂災害、建物倒壊の危険がない場合は、家で過ごす「在宅避難」が選択肢になることもあります。
ペットにとって、避難所は大きな環境変化です。知らない人、知らない動物、いつもと違う音やにおい。その中で過ごすことが、大きなストレスになる場合もあります。
一方で、自宅に危険がある場合は、迷わず避難が必要です。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 自宅が安全で、倒壊や火災の危険がない | 在宅避難を検討する |
| 家具が倒れ、ガラスが割れている | 安全な部屋へ移動し、必要なら避難する |
| 火災、津波、土砂災害の危険がある | すぐに避難する |
| 自宅に大きな損傷があり、安全を確認できない | 無理にとどまらず、安全な場所へ避難する |
避難所へ行くことだけが防災ではありません。家で過ごせるように備えることも、大切な地震対策です。
同行避難とは?同じ部屋で過ごせるとは限らない
ペットの防災でよく出てくる言葉に「同行避難」があります。同行避難とは、災害時に飼い主がペットを連れて安全な場所まで避難することです。
ただし、同行避難は「避難所で人とペットが同じ部屋で過ごせる」という意味ではありません。避難所では、動物が苦手な方やアレルギーのある方など、さまざまな人が同じ場所で過ごすため、ペットは別室や屋外スペースで過ごすこともあります。「同行避難」と、避難先でどう過ごすかを指す「同伴避難」は、似ていますが別の話です。

詳しい考え方は、環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」も参考になります。
自治体のペット防災情報も確認しておく
ペットとの避難ルールは、全国で完全に同じではありません。
たとえば、ペットの受け入れ場所、対象となる動物、必要な持ち物、避難所での管理方法などは、自治体や避難所ごとに違うことがあります。
そのため、日頃から「市区町村名 ペット 同行避難」「市区町村名 ペット 防災」などで検索し、自分の地域の情報を確認しておくと安心です。東京都にお住まいの方は、以下のページも参考になります。
受け入れ方が変更される場合もあるため、最新情報はお住まいの自治体の公式ページで確認しておきましょう。
ペットのために備えておきたい防災グッズ
ペットの防災グッズは、特別なものばかりをそろえる必要はありません。まずは、いつもの暮らしで使っているものを、少し多めに持っておくことから始めましょう。
- 食べもの・飲みもの:フード、水、おやつ、療法食、常備薬、食器
- 移動・避難:キャリー、ケージ、首輪、リード、ハーネス、タオル(猫は洗濯ネットも)
- トイレ・衛生用品:ペットシーツ、猫砂、うんち袋、ウェットシートなど
- 情報として:写真、名前・年齢のメモ、病歴、ワクチン記録、かかりつけ病院の連絡先

犬・猫それぞれに必要なものや、持ち出し用・備蓄用の分け方など、より詳しいリストは上のページにまとめています。
迷子にしないための備え
地震の後は、ドアや窓が開いたままになったり、フェンスや塀が壊れたりすることがあります。
驚いたペットが外へ飛び出してしまうと、慣れた場所でも帰れなくなることがあります。特に猫は、近くに隠れていても声を出さないことがあり、見つけるまでに時間がかかることもあります。
迷子対策は、ひとつだけに頼らず、いくつか重ねておくことが大切です。
- 首輪をつける
- 迷子札をつける
- 犬の場合は鑑札や注射済票を確認する
- マイクロチップの登録情報を最新にしておく
- ペットの写真をスマホに保存しておく
- 特徴を書いたメモを用意しておく
「うちの子は外に出ないから大丈夫」と思っていても、災害時はいつもと違うことが起こります。外に出る可能性が低い子ほど、もしもの時に見つける準備をしておきましょう。

留守中に地震が起きたら
飼い主が家にいる時だけ、地震が起きるとは限りません。
仕事中、買い物中、旅行中、病院の付き添い中。そんな時に大きな地震が起きた場合、家の中にペットがいることを、外の人はすぐには知ることができません。
特にマンションや住宅地では、外から見ただけでは「犬がいる」「猫が隠れている」「小動物がケージにいる」ということはわかりにくいものです。
だからこそ、留守中の備えも大切です。
- 家族や信頼できる人に、ペットの居場所を共有しておく
- 緊急時に連絡してほしい人を決めておく
- ペットの情報をカードやメモにまとめておく
- 玄関付近に、ペットがいることがわかる表示をしておく
- 外出時も、首輪や迷子札を確認しておく
「この家には守りたい命がいます」と伝える準備は、飼い主がそばにいられない時間のための備えです。
キャリーやクレートに慣れておく
避難時に急にキャリーへ入れようとしても、ふだんから慣れていないと、ペットにとっては大きなストレスになります。キャリーは、病院へ行く時だけ出てくるものにしないのが理想です。
- 部屋の中に出したままにし、中にタオルを入れておく
- おやつを使って、自由に出入りできるようにする
- 短い時間から、扉を閉める練習をする
いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。キャリー練習は、筋トレに少し似ています。急に本気を出すより、毎日ちょっとの方が続きます。

犬・猫・小動物で気をつけたいこと
犬の場合
犬はリードやハーネスで移動しやすい一方、避難所では吠え、興奮、他の犬との距離が問題になることがあります。
日頃から「待て」「おいで」「ハウス」などの基本的な練習をしておくと、災害時の負担が少なくなります。
また、首輪だけでは抜けてしまう子もいるため、体に合ったハーネスを用意しておくと安心です。
猫の場合
猫は、驚くと隠れることが多い動物です。
地震の時にどこへ隠れやすいかを、ふだんから把握しておきましょう。押し入れ、ベッドの下、洗濯機の裏、家具のすき間など、家の中の「避難場所」を知っておくことが大切です。
猫は抱っこで避難しようとすると、驚いて逃げてしまうことがあります。避難にはキャリーが必要です。洗濯ネットに慣れておくと、移動や通院の時に役立つ場合もあります。
うさぎ・鳥・小動物の場合
うさぎ、鳥、ハムスターなどの小動物は、温度変化や音、環境の変化にとても敏感です。
避難所によっては、受け入れが難しい場合もあります。移動用のケース、保温用品、いつものフード、床材、給水用品などをまとめておきましょう。
また、預け先候補を事前に考えておくことも大切です。家族、親戚、友人、かかりつけの動物病院、ペットホテルなど、いくつかの選択肢があると安心です。
地震のあと、体調にも変化が出ていないか見ておく
地震の揺れそのものだけで、体調を大きく崩す子は多くありません。ただし、心臓や呼吸器に持病がある子、シニアの子などは、強いストレスがきっかけで変化が出ることがあります。「怖がっているだけ」と思っていたら、けがや体調不良のサインだった、ということも。地震の直後だけでなく、その後も食事、水分、排泄、歩き方などを普段と比べて見ておきましょう。
様子見を続けず、すぐ動物病院へ連絡したい様子
息が苦しそうで、胸やお腹を大きく動かして呼吸している
猫が口を開けて呼吸している
ぐったりして立てない、呼びかけへの反応が乏しい
呼吸の異変は、落ち着くまで待とうとせず相談したいサインです。苦しそうな子を強く抱きしめたり、確認のために無理に口を開けたりせず、動物病院へ連絡して移動や受診の指示を受けましょう。
普段との違いを記録し、早めに相談したい様子
- 食べない、水を飲まない
- 震えや落ち着かない様子が続く
- 隠れたままで、食事やトイレにも出てこない
- 下痢や嘔吐がある
- 尿や便が出ていない
- 足をかばう、触られるのを嫌がる
動物病院へ電話するときの伝え方
電話では、最初にいちばん心配な症状を伝え、その後で地震からの経過や、普段との違いを説明すると伝わりやすくなります。たとえば、次のように話せます。
震えや食欲の変化を相談するとき
「地震のあとから犬が震えています。揺れがおさまって○時間ほどですが、まだ落ち着きません。呼吸は○○で、最後に食べたのは○時です。今すぐ受診したほうがよいでしょうか。」
呼吸の異変があるとき
「猫が口を開けて、苦しそうに呼吸しています。地震のあとからです。すぐに診ていただけますか。移動するときの注意も教えてください。」
例文は、その子に実際に見られる症状へ置き換えて使います。最後に食べた時間などがわからなくても、調べ終わるまで連絡を待つ必要はありません。特に呼吸の異変がある場合は、その様子を最初に伝えましょう。
災害時は、いつもの病院が通常どおり診療できない場合もあります。受診先の診療状況や、安全に移動できる経路も確認しましょう。日頃から近隣の動物病院の連絡先を控えておくと、こうしたときの助けになります。
今日からできるペットの地震対策チェックリスト
大きな準備を一度にやろうとすると、少し大変です。
まずは、今日できることをひとつだけ選んでみましょう。
家の中の備え
- 家具を固定する
- ケージや寝床の上に物が落ちないようにする
- 窓ガラスの近くに寝床を置かない
- キャリーをすぐ出せる場所に置く
- ペットが隠れる場所を把握する
情報の備え
- 避難所の場所を確認する
- ペット同行避難の可否を確認する
- 家族で連絡方法を決める
- 預け先候補を考えておく
- ペット情報カードを用意する
防災は、特別な日のためだけのものではありません。いつもの暮らしの中に、少しずつ混ぜていくものです。
ペット防災カードやレスキューサインも、備えのひとつ

地震の備えには、フードや水、キャリーのような「持ち物」だけでなく、情報を伝えるための備えもあります。
たとえば、ペットの名前、性格、持病、薬、かかりつけの病院、緊急連絡先などをカードにまとめておくと、いざという時に家族以外の人にも情報を伝えやすくなります。
また、留守中の災害に備えて、玄関まわりに「家にペットがいます」とわかる表示をしておくことも、ひとつの備えです。
これは、誰かに必ず助けてもらえるという意味ではありません。けれど、家の中にいる命の存在を、外の人に伝えるきっかけになります。
小さなカードやサインでも、もしもの時には大切な情報になります。

よくある質問
本文を読んでも迷いやすい、地震後の接し方についてまとめました。
まとめ|今の様子を確かめて、日頃の備えにつなげる
地震のあとに犬や猫が怖がるときは、周囲の安全を確かめ、けがや呼吸の異変がないかを見ることから。安全な場所では無理に抱いたり引っ張り出したりせず、その子が落ち着ける距離で見守ります。
「いつもと違う」「様子がおかしい」と気になる変化は、怖さのせいと決めつけず獣医師に相談してください。
落ち着いてからは、寝床の上に落ちそうな物がないか確認する、キャリーを使いやすい場所へ置く、ペットの写真をスマホに保存するなど、今できる備えを一つ選んでみましょう。うちの子と安心して暮らすために、日々の中で少しずつ整えていけます。
防災に関するルールや対応は自治体・状況によって異なります。お住まいの地域の最新の防災情報を確認し、かかりつけの獣医師にも相談しながら備えていただくことをおすすめします。







