亡くなった子にお線香をあげたい。でも、同じ家にいる犬や猫、鳥やハムスターに煙や匂いは平気だろうか、と手が止まることもあります。亡くなった子にお線香をあげたい気持ちと、いま一緒にいる子を守りたい気持ち。どちらも同じ「大切」から出ているのに、両立のしかたは意外と誰も教えてくれません。
結論からいうと、同居の子への負担をできるだけ避けるなら、別の部屋で焚き、火が消えるまで見守ったうえで換気する形が安心です。鳥やハムスター、うさぎなど小さな動物がいる部屋では、焚かないでおきます。あとは、家にいる子の種類に合わせて決めていけます。
お線香の本数や折り方、続ける期間といった基本は、こちらの記事に。

お線香の煙は、締め切った部屋にしばらく残る
まず、煙の話から。お線香の煙には、目に見えないほど細かな粒(PM2.5)が含まれています。愛知県衛生研究所が実験室で室内の発生源を調べた結果では、線香やお香を焚くと室内の濃度が上がり、高い状態が1時間以上続きました。一般の家庭で同じ数字になるとは限りませんが、「焚いたあとも、しばらく空気に残る」ことは覚えておきたいところです。
京都の動物病院は、お線香の煙で呼吸障害を起こした鳥が来院した例を挙げて、「微量であっても、何度も続くと小型の動物の肺には負担となります」と注意を呼びかけています。細かな粒を繰り返し吸い込む環境にしないためにも、動物が過ごす部屋とは分けておきたいところです。「少しくらいなら」と思う日もあるかもしれませんが、少しが毎日続くのが供養。だからこそ、最初に場所を決めておくのがいちばん楽です。
鳥がいる家:鳥のいる部屋では焚かない
インコ・文鳥・オカメインコ。鳥がいる部屋では、焚きません。この記事でいちばんはっきり言いたいのは、ここです。前の節で触れた動物病院の来院例も鳥でした。
このとき、鳥やケージを動かすより、お線香のほうを鳥のいない部屋へ持っていくほうが取り入れやすい方法です。ケージの移動そのものが負担になる子もいます。
別の部屋で焚くときは、ドアを閉めておきます。開けたままだと、鳥のいる部屋へ煙や香りが流れ込むことがあるためです。焚き終えたら、窓を開けて空気を入れ替えてから、いつもの暮らしに戻ります。
間取りの都合でどうしても分けられないなら、火を使わない形に。香りを出さない、灯りだけのLEDろうそくという選び方もあります。
ハムスター・うさぎなど小さな動物、爬虫類・魚:煙の届かない場所に
ハムスターやうさぎ、フェレット、モルモット、チンチラについては、鳥のような来院例が挙がっているわけではありません。それでも体の小ささは同じなので、念のため鳥と同じように考えておきます。その子のいる部屋では焚かず、お線香のほうを別の部屋へ。
カメやトカゲなど爬虫類も、肺で息をしている点は同じ。ケージのふたや通気口から煙が入らないよう、その子のいる部屋では焚かないでおきます。金魚やメダカの水槽がある部屋でも同じです。水の中の子に煙の影響がどこまで及ぶかは分からないぶん、はじめから離しておくほうが気が楽です。
もうひとつ、片づけのこと。テーブルや棚の上で焚くと、灰や燃えかすがその周りに落ちることがあります。部屋で放して遊ばせる子がいる家では、焚いたあとに周りを一度ふいておくと、口にする心配が減ります。
犬がいる家:別室と換気、それから誤食と「倒す」に気をつける
犬の場合も、基本の形は同じです。焚くあいだは別の部屋にいてもらい、終わったら換気。それとは別に、犬の家で気をつけたいのが誤食と「倒す」。誤食のほうは、焚いていない時間にも起こります。
誤食は、お線香そのもの、燃えかす、袋や箱。においが気になるのか、口にしてしまう子がいます。香炉もお線香の箱も、届かない高さにしまっておきます。
倒すほうは、犬が触れたり棚にぶつかったりして、火のついた香炉が落ちること。やけどや火事につながります。焚いているあいだ、そばを離れないこと。それで、この心配はだいぶ減ります。
香りの種類にも、気を配っておきたいところです。米国のペット中毒相談窓口「Pet Poison Helpline」は、犬が中毒を起こしうる精油(エッセンシャルオイル)として、ティーツリー・ユーカリ・シナモン・松などを挙げています。
自分の家でやるなら、少なくともこうした精油を含むお香やアロマのディフューザーは、犬のいる部屋では使いません。一方、白檀など香木のお線香は、香りの種類より煙の量と距離で考えます(次の猫の節の注記と同じ考え方です)。
猫がいる家:棚の上も「届く場所」。精油入りは使わない
猫の場合、犬と違うのは「高い場所が安全ではない」こと。棚の上の香炉も、猫にとってはいつもの通り道です。
焚いているあいだは別の部屋にいてもらい、終わったら、火と灰が完全に消えて香炉が冷めたことを確かめてから、扉のある棚や引き出しへ。熱いまましまうと、こちらのほうが危険です。
精油入りのお香・ディフューザーは、猫がいる家では使わない
それから、香りの種類について。ペットフードメーカーのヒルズが、ASPCA(米国動物虐待防止協会)やカナダ獣医師会などの資料をもとにまとめた案内では、猫は精油(エッセンシャルオイル)に含まれる一部の成分をうまく代謝できず、濃縮された精油が特に危険とされています。
同じ案内では、カナダ獣医師会が猫に有毒とする精油の例として、ティーツリー・ユーカリ・ラベンダーなど20種ほどが挙げられています。ディフューザーのように空気中へ広げる使い方についても、ヒルズは「現時点で中毒を起こす可能性は低いようだが、分かっていないことも多く、リスクは避けたほうがよい」としています。
精油を使った製品は、成分も濃度もさまざまです。猫がいる家では、精油入りのお香や、香りを拡散させる製品は使わない。好きな香りをあきらめるのは少し寂しいことですが、ここは猫のほうを優先したいところです。
同居の子がいる家で意識したい、5つのこと
家にいる子の種類が違っても、共通して意識したいことがあります。医学的に決まったルールではなく、自分の家でやるならこうする、という安全側の目安です。
- 別の部屋で焚く。 動物のいる部屋では焚かない
- 火がついている間は、そばを離れない。 燃え尽きるまで見届ける
- 終わったら、十分に換気する。 煙や強い香りが残っていないことを確かめてから、動物を部屋に戻す
- お線香・燃えかす・箱は届かない場所へ。 香炉は冷めてから片づける。猫は棚の上も「届く」
- 様子が違えば中止して、動物病院へ相談する。 咳やくしゃみ、呼吸が苦しそう、元気がない——いつもと違う様子が受診の目安
このうちどれかが難しい日は、その日はお線香をお休みにして、お水を替えるだけでも。あの子への気持ちは、煙の量では決まらない。そう思っています。
火を使わない形もある
「毎回別の部屋に移すのが大変」「うちの間取りでは分けられない」。そういう家では、火を使わない形に切り替えるのも自然な選択です。
香りを出さない、灯りだけのLEDろうそくや電子線香。灯りだけでも、手を合わせる時間の合図になります。
火を使うなら、煙の少ないタイプや短いミニ寸など、お線香そのものを選び直す形もあります。種類の見分け方と売り場は、こちらの記事に。

いま隣にいる子を守ることも、あの子を大切に思う気持ちの延長線にあります。残された子との暮らしそのものに迷いがあるときは、こちらの記事も。

まとめ:焚く場所を、家にいる子で決める
同居の子がいるなら、お線香は「どこで焚くか」を先に決めます。答えは家にいる子の種類で変わりますが、その子のいる部屋では焚かない、という一点は共通です。
それが難しい日は、LEDの灯りやお水だけでも。煙の少ない日があっても、あの子との時間が減るわけではありません。



