地震は、いつ起こるかわかりません。人にとっても怖い出来事ですが、犬や猫、小さな動物たちにとっては、何が起きたのかわからないまま、大きな揺れや音、家具が倒れる気配、家族の慌てた声に包まれる時間でもあります。
だからこそ大切なのは、完璧な防災を目指すことではなく、ふだんの暮らしの中で少しだけ「もしも」を想像しておくことです。
この子は、怖い時どこに隠れるだろう。
避難するなら、何を持っていけばいいだろう。
自分が家にいない時、この家にペットがいることは誰かに伝わるだろうか。
この記事では、ペットと暮らす方に向けて、地震が起きた時の行動、日頃の備え、避難の考え方、防災グッズ、迷子対策、留守中の備えまでをまとめました。
大切な「うちの子」を守るために、今日できることから一緒に確認していきましょう。
地震が起きたら、まずは飼い主自身の安全を守る
地震が起きた瞬間、まず大切なのは、飼い主自身の安全を確保することです。
ペットを守りたい気持ちが先に出るのは自然なことです。けれど、飼い主がけがをしてしまうと、その後の避難やお世話が難しくなってしまいます。
揺れている最中に、無理に犬や猫を抱き上げようとしなくても大丈夫です。驚いたペットは、いつもと違う動きをすることがあります。急に走り出したり、隠れたり、抱こうとした手を噛んだり引っかいたりすることもあります。
まずはテーブルの下や安全な場所で身を守る。揺れがおさまったら、ペットの居場所を確認する。この順番を覚えておくだけでも、いざという時の行動が少し落ち着きます。
ペットは地震の時、どんな行動をする?
犬や猫は、地震の揺れそのものだけでなく、音や空気の変化にも敏感です。
食器が落ちる音、家具が動く音、窓が揺れる音、人の慌てた声。そうしたものが重なると、ペットは強い不安を感じます。
猫の場合は、押し入れ、ベッドの下、家具のすき間、カーテンの裏など、暗くて狭い場所に隠れることがあります。犬の場合は、吠え続ける、震える、固まる、部屋の中を走り回る、飼い主から離れなくなるなど、反応はさまざまです。
大事なのは、「怖がるのは自然な反応」と考えることです。
叱ったり、無理に引っ張り出したりするよりも、まずは安全な場所にいるか、けがをしていないかを確認しましょう。
発災直後に確認したいこと
揺れがおさまったら、落ち着いて次のことを確認します。
- ペットがどこにいるか
- けがをしていないか
- ガラスや倒れた家具の近くにいないか
- 首輪やハーネスが外れていないか
- ドアや窓が開いていないか
- 火災、津波、土砂災害などの危険がないか
地震の後は、玄関や窓がゆがんで開いたままになったり、フェンスが壊れたりすることがあります。外へ逃げ出す危険もあるため、まずは出入口を確認しましょう。
猫が隠れて出てこない場合も、無理に追いかけるとさらに奥へ逃げてしまうことがあります。避難の必要がない状況であれば、声をかけながら、出てこられる道を確保してあげることが大切です。
避難するか、在宅避難するかを考える
地震が起きたら、必ず避難所へ行くとは限りません。
自宅が安全で、火災や津波、土砂災害、建物倒壊の危険がない場合は、家で過ごす「在宅避難」が選択肢になることもあります。
ペットにとって、避難所は大きな環境変化です。知らない人、知らない動物、いつもと違う音やにおい。その中で過ごすことが、大きなストレスになる場合もあります。
一方で、自宅に危険がある場合は、迷わず避難が必要です。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 自宅が安全で、倒壊や火災の危険がない | 在宅避難を検討する |
| 家具が倒れ、ガラスが割れている | 安全な部屋へ移動し、必要なら避難する |
| 火災、津波、土砂災害の危険がある | すぐに避難する |
| 飼い主が家に戻れない可能性がある | 家族や近隣、外部にペットの存在が伝わる備えをしておく |
避難所へ行くことだけが防災ではありません。家で過ごせるように備えることも、大切な地震対策です。
同行避難とは?同じ部屋で過ごせるとは限らない
ペットの防災でよく出てくる言葉に「同行避難」があります。
同行避難とは、災害時に飼い主がペットを連れて避難所などの安全な場所まで避難することです。
ただし、ここで注意したいのは、同行避難は「避難所で人とペットが同じ部屋で過ごせる」という意味ではないことです。
避難所では、動物が苦手な方、アレルギーのある方、小さなお子さん、高齢の方など、さまざまな人が同じ場所で過ごします。そのため、ペットは屋外スペース、別室、ケージ内など、人とは分かれた場所で過ごすことがあります。
避難所での受け入れ方は、自治体や避難所によって異なります。事前に「自分の地域ではペット同行避難ができるのか」「どこで過ごすのか」「ケージやキャリーは必要か」を確認しておきましょう。
詳しい考え方は、環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」も参考になります。
環境省:人とペットの災害対策ガイドライン
自治体のペット防災情報も確認しておく
ペットとの避難ルールは、全国で完全に同じではありません。
たとえば、ペットの受け入れ場所、対象となる動物、必要な持ち物、避難所での管理方法などは、自治体や避難所ごとに違うことがあります。
そのため、日頃から「市区町村名 ペット 同行避難」「市区町村名 ペット 防災」などで検索し、自分の地域の情報を確認しておくと安心です。
東京都でも、避難所での同行避難の対応は区市町村に確認するよう案内されています。東京都にお住まいの方は、以下のページも参考になります。
東京都:同行避難するために 日ごろからの備えが大切です
大阪市、横浜市、名古屋市、静岡市、福岡市などでも、ペット防災に関する情報を公開している場合があります。この記事ではリンクを増やしすぎませんが、お住まいの自治体の公式ページを一度確認しておきましょう。
ペットのために備えておきたい防災グッズ
ペットの防災グッズは、特別なものばかりをそろえる必要はありません。
まずは、いつもの暮らしで使っているものを、少し多めに持っておくことから始めましょう。

食べもの・飲みもの
- いつも食べているフード
- 水
- おやつ
- 療法食
- 常備薬
- 食器
災害時は、いつものフードがすぐに手に入らないことがあります。特に療法食や薬が必要な子は、切らさないように少し余裕を持っておくと安心です。
移動・避難に必要なもの
- キャリーバッグ
- ケージ、クレート
- 首輪
- リード
- ハーネス
- タオル、ブランケット
- 猫の場合は洗濯ネット
特にキャリーやクレートは、避難時だけでなく、家の中で安全な居場所をつくるためにも役立ちます。
トイレ・衛生用品
- ペットシーツ
- 猫砂
- うんち袋
- ウェットシート
- ビニール袋
- 消臭袋
- ガムテープ
避難所や車中、自宅での在宅避難では、においや衛生面への配慮も大切です。人とペットが気持ちよく過ごすためにも、トイレ用品は多めに準備しておくと安心です。
情報として持っておきたいもの
- ペットの写真
- 飼い主と一緒に写っている写真
- 名前、年齢、性格のメモ
- 病歴、薬、アレルギーの情報
- ワクチン接種の記録
- かかりつけ動物病院の連絡先
- 緊急連絡先
写真は、迷子になった時にとても大切です。ペットだけの写真だけでなく、飼い主と一緒に写っている写真もあると、家族であることを説明しやすくなります。
迷子にしないための備え
地震の後は、ドアや窓が開いたままになったり、フェンスや塀が壊れたりすることがあります。
驚いたペットが外へ飛び出してしまうと、慣れた場所でも帰れなくなることがあります。特に猫は、近くに隠れていても声を出さないことがあり、見つけるまでに時間がかかることもあります。
迷子対策は、ひとつだけに頼らず、いくつか重ねておくことが大切です。
- 首輪をつける
- 迷子札をつける
- 犬の場合は鑑札や注射済票を確認する
- マイクロチップの登録情報を最新にしておく
- ペットの写真をスマホに保存しておく
- 特徴を書いたメモを用意しておく
「うちの子は外に出ないから大丈夫」と思っていても、災害時はいつもと違うことが起こります。外に出る可能性が低い子ほど、もしもの時に見つける準備をしておきましょう。
留守中に地震が起きたら
飼い主が家にいる時だけ、地震が起きるとは限りません。
仕事中、買い物中、旅行中、病院の付き添い中。そんな時に大きな地震が起きた場合、家の中にペットがいることを、外の人はすぐには知ることができません。
特にマンションや住宅地では、外から見ただけでは「犬がいる」「猫が隠れている」「小動物がケージにいる」ということはわかりにくいものです。
だからこそ、留守中の備えも大切です。
- 家族や信頼できる人に、ペットの居場所を共有しておく
- 緊急時に連絡してほしい人を決めておく
- ペットの情報をカードやメモにまとめておく
- 玄関付近に、ペットがいることがわかる表示をしておく
- 外出時も、首輪や迷子札を確認しておく
「この家には守りたい命がいます」と伝える準備は、飼い主がそばにいられない時間のための備えです。
キャリーやクレートに慣れておく
避難時に急にキャリーへ入れようとしても、ふだんから慣れていないと、ペットにとっては大きなストレスになります。
キャリーは、病院へ行く時だけ出てくるものにしないのが理想です。
- 部屋の中に出したままにしておく
- 中にいつものタオルを入れる
- おやつを入れて、自由に出入りできるようにする
- 短い時間から扉を閉める練習をする
- 車移動が必要な子は、短距離から慣らす
キャリーに慣れていると、避難だけでなく、通院や一時預かりの時にも負担が少なくなります。
いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。キャリー練習は、筋トレに少し似ています。急に本気を出すより、毎日ちょっとの方が続きます。
犬・猫・小動物で気をつけたいこと
犬の場合
犬はリードやハーネスで移動しやすい一方、避難所では吠え、興奮、他の犬との距離が問題になることがあります。
日頃から「待て」「おいで」「ハウス」などの基本的な練習をしておくと、災害時の負担が少なくなります。
また、首輪だけでは抜けてしまう子もいるため、体に合ったハーネスを用意しておくと安心です。
猫の場合
猫は、驚くと隠れることが多い動物です。
地震の時にどこへ隠れやすいかを、ふだんから把握しておきましょう。押し入れ、ベッドの下、洗濯機の裏、家具のすき間など、家の中の「避難場所」を知っておくことが大切です。
猫は抱っこで避難しようとすると、驚いて逃げてしまうことがあります。避難にはキャリーが必要です。洗濯ネットに慣れておくと、移動や通院の時に役立つ場合もあります。
うさぎ・鳥・小動物の場合
うさぎ、鳥、ハムスターなどの小動物は、温度変化や音、環境の変化にとても敏感です。
避難所によっては、受け入れが難しい場合もあります。移動用のケース、保温用品、いつものフード、床材、給水用品などをまとめておきましょう。
また、預け先候補を事前に考えておくことも大切です。家族、親戚、友人、かかりつけの動物病院、ペットホテルなど、いくつかの選択肢があると安心です。
地震後に見たいペットの体調変化
地震の直後は、けががないように見えても、あとから体調の変化が出ることがあります。
特に、強いストレスを受けた後は、食欲や排泄、呼吸、行動に変化が出ることがあります。
- 食欲がない
- 水を飲まない
- 震えている
- 呼吸が荒い
- 隠れたまま出てこない
- 下痢や嘔吐がある
- トイレをしない
- 足をかばっている
- 触ると嫌がる
- いつもと反応が違う
少しでも心配な様子がある時は、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
災害時は、いつもの病院が通常通り診療できない場合もあります。近くの動物病院を複数メモしておくと、いざという時に慌てずに済みます。
今日からできるペットの地震対策チェックリスト
大きな準備を一度にやろうとすると、少し大変です。
まずは、今日できることをひとつだけ選んでみましょう。
家の中の備え
- 家具を固定する
- ケージや寝床の上に物が落ちないようにする
- 窓ガラスの近くに寝床を置かない
- キャリーをすぐ出せる場所に置く
- ペットが隠れる場所を把握する
持ち物の備え
- フードと水を多めに用意する
- 薬や療法食を切らさないようにする
- トイレ用品をまとめておく
- 首輪、リード、ハーネスを確認する
- ペットの写真をスマホに保存する
情報の備え
- 避難所の場所を確認する
- ペット同行避難の可否を確認する
- 家族で連絡方法を決める
- 預け先候補を考えておく
- ペット情報カードを用意する
防災は、特別な日のためだけのものではありません。いつもの暮らしの中に、少しずつ混ぜていくものです。
ペット防災カードやレスキューサインも、備えのひとつ
地震の備えには、フードや水、キャリーのような「持ち物」だけでなく、情報を伝えるための備えもあります。
たとえば、ペットの名前、性格、持病、薬、かかりつけの病院、緊急連絡先などをカードにまとめておくと、いざという時に家族以外の人にも情報を伝えやすくなります。
また、留守中の災害に備えて、玄関まわりに「家にペットがいます」とわかる表示をしておくことも、ひとつの備えです。
これは、誰かに必ず助けてもらえるという意味ではありません。けれど、家の中にいる命の存在を、外の人に伝えるきっかけになります。
小さなカードやサインでも、もしもの時には大切な情報になります。

よくある質問
地震の時、ペットを抱っこして逃げた方がいいですか?
揺れている最中に無理に抱っこする必要はありません。まずは飼い主自身の安全を守り、揺れがおさまってからペットの居場所やけがの有無を確認しましょう。避難が必要な場合は、犬はリードやハーネス、猫や小動物はキャリーを使うのが基本です。
ペットと一緒に避難所へ行けますか?
地域や避難所によって対応が異なります。同行避難ができる場合でも、人とペットが同じ部屋で過ごせるとは限りません。事前に、お住まいの自治体のペット同行避難に関する案内を確認しておきましょう。
ペット用の防災グッズは何日分必要ですか?
まずは数日分を目安に、フード、水、トイレ用品、薬、療法食などを用意しておくと安心です。特に薬や療法食が必要な子は、すぐに手に入らない可能性を考えて、日頃から少し余裕を持っておきましょう。
猫が地震で隠れて出てこない時はどうしたらいいですか?
避難の必要がない状況であれば、無理に引っ張り出さず、安全な場所にいるかを確認しましょう。避難が必要な場合に備えて、日頃から隠れやすい場所を把握し、キャリーや洗濯ネットに少しずつ慣らしておくことが大切です。
まとめ|守る準備は、怖がるためではなく、安心して暮らすために
地震への備えというと、少し怖い話に聞こえるかもしれません。
でも本当は、怖がるための準備ではありません。
大切な子と、これからも一緒に暮らしていくため。
もしもの時に、少しでも落ち着いて動けるようにするため。
自分がそばにいない時でも、この家には守りたい命がいると伝えられるようにするため。
完璧でなくて大丈夫です。
まずは、フードを少し多めに置く。
キャリーを出しておく。
避難所を調べる。
ペットの写真をスマホに保存する。
ひとつ備えるたびに、もしもの不安は少しずつ、安心に変わっていきます。
大切なのは、全部を一度にそろえることではなく、今日ひとつ備えること。
その小さな準備が、いつか「うちの子」を守る力になります。

