老犬・老猫の看取り環境の整え方——最期まで家で過ごすための準備

老犬・老猫の看取り期は、調子が良くうれしい日もあれば、不安が大きくなる日もある時期です。
「できるだけ最期まで家で一緒にいたい」と考える方は多い一方で、実際にはどんな環境を整えればよいのか、どこまで家でできるのか、迷うことも少なくありません。

看取り環境を整えるときに大切なのは、特別なことをたくさんすることよりも、その子が今日を少しでも穏やかに過ごせるようにすることだといわれています。この記事では、老犬・老猫が看取り期をできるだけ落ち着いて過ごせるように、住まいの整え方、日々の介助、獣医師に相談したい場面について、基本を中心にまとめます。

目次

看取り環境を整える前に、大切にしたいこと

「頑張らせること」より、「穏やかに過ごせること」を見る

看取り期には、食欲の低下、足腰の弱り、呼吸の変化、排泄の失敗など、いろいろな変化が少しずつ重なってくることがあります。そうした時期は、「前のようにできるように戻す」ことだけを目標にするよりも、その子が今どれだけ楽に過ごせているかを大切に考えていくことが多いようです。

また、「家で過ごしたい」という気持ちと、「獣医師に相談すること」は別のものではありません。住み慣れた家で過ごしながら、痛みや吐き気、水分や栄養のことなどを相談しつつ支えていく形を選ぶ方もいます。看取りを家で考えるときほど、ご家族だけで抱え込まず、かかりつけの獣医師と早めに話しておくと安心しやすいとされています。

寝床と生活動線は、できるだけ負担の少ない形に整える

寝床は「見守りやすさ」と「落ち着きやすさ」の両方を意識する

寝床を整えるときは、その子が落ち着けることに加えて、ご家族が様子を見やすいことも大切です。食事や水分の介助がしやすく、トイレの世話もしやすい場所のほうが、日々の負担を減らしやすいことがあります。

エアコンの風が直接当たりにくく、暑すぎず寒すぎず、音や人の出入りが激しすぎない場所のほうが、休みやすいと感じる子もいるようです。以前からその子がよく過ごしていた場所があるなら、そこを基準に整えていくのもひとつの方法です。

滑りやすさや段差は、早めに見直しておく

足腰が弱ってくると、床の滑りやすさや少しの段差も負担になりやすいといわれています。立ち上がるときに足が開く、歩き出しをためらう、向きを変えにくそうにする、といった様子が見えてきたら、床や通り道を整えてあげると安心です。

  • フローリングには滑り止めマットやラグを敷く
  • よく通る場所の段差を減らす
  • ソファやベッドに上がる習慣がある場合は、無理のない高さの補助を考える

ただ、補助の道具が合うかどうかは、その子の体格や性格でも変わります。かえって使いにくそうな場合は、無理に慣れさせるより、行かなくて済むよう生活動線そのものを変えるほうが合うこともあります。

寝たままの時間が増えたら、寝具と体勢にも気を配る

体が弱ってくると、横になっている時間が長くなることがあります。その場合は、薄い敷物よりも、ある程度厚みがあり、体をやさしく支えやすい寝具のほうが過ごしやすいことがあるようです。

また、同じ向きで長く寝ていると、一部の皮膚や関節に負担がかかりやすくなるといわれています。無理のない範囲で体勢をそっと変えたり、皮膚が湿ったままにならないようにしたりして、できるだけ清潔で乾いた状態を保てると安心です。

室温は、人の感覚だけで決めすぎない

年齢を重ねると、自分で体温調節しにくくなる子もいるようです。飼い主さんが立っている位置では快適でも、床に近い場所は思ったより冷えていたり、熱がこもっていたりすることがあります。

  • 寝ている場所の高さで暑さ寒さを確認する
  • ブランケットやタオルで細かく調整する
  • エアコンやヒーターの風が直接当たらないようにする
  • 自分で移動できる子なら、少し暖かい場所と少し涼しい場所を選べるようにする

食事は「食べる量」だけでなく、「つらくないこと」も大切にする

食欲低下の背景には、いろいろな理由があると考えられています

食欲が落ちてくると、どうしても「何とか食べてほしい」と思うものです。ただ、看取り期の食欲低下は、単なる好き嫌いではなく、痛み、吐き気、口の違和感、飲み込みづらさ、呼吸のしづらさなどが関係していることもあるといわれています。

そのため、食べ方の工夫だけで何とかしようとするのではなく、まずは不快感を減らせる方法がないか、獣医師に相談してみることが大切だとされています。

家でできる食事の工夫

食べられるうちは、その子が受け入れやすい形に寄せていく工夫が役立つことがあります。

  • やわらかいフードやウェットフードにする
  • 少し温めて香りを立てる
  • 器の高さを調整し、首や背中に負担がかかりにくい姿勢にする
  • 一度にたくさんではなく、少量ずつ回数を分ける

ただし、昨日まで食べていた方法が今日は合わない、ということも珍しくないようです。食べる量だけでなく、食べたあとに疲れすぎていないか、苦しそうではないかも見ながら、その日ごとに調整していくことが多いとされています。

無理に食べさせないほうがよい場面もある

食べてほしい気持ちは自然ですが、食事そのものがつらい時間になってしまうと、かえって負担が大きくなることがあります。口元に持っていくと強く嫌がる、飲み込みにくそうにする、むせる、飲み込めず口からこぼれる、といった様子があるときは、無理をしないほうがよいといわれています。

特に、横になったまま無理に口に入れるのは避けたほうがよいとされることがあります。食事や水分の介助に不安があるときは、早めに獣医師へ相談したほうが安心です。

水分・排泄・清潔のケアは、毎日の過ごしやすさを支える土台になる

水分は「飲めるか」だけでなく「飲みに行けるか」も見る

体力が落ちてくると、水を飲みに行く動作そのものが負担になることがあるようです。自分で歩ける子でも、器が遠い、低すぎる、足元が滑る、といったことが小さな負担になることがあります。

  • 水皿は休む場所の近くにも置く
  • 首を下げにくそうなら器の高さを調整する
  • 必要に応じて、飲みやすい方法を獣医師に相談する

トイレは、今の体の状態に合わせて近くに整える

トイレまでの距離が長いと、それだけで我慢や失敗につながることがあります。犬なら通り道の滑り止め、猫なら出入りしやすい高さのトイレなど、今の動きやすさに合わせて見直していくとよいとされています。

ただ、急に場所や形を変えると戸惑う子もいます。新しいトイレ環境に変えるときは、一気に変えるより、様子を見ながら少しずつ慣らすほうが合うこともあります。

おむつやシートを使うときは、皮膚の状態もこまめに確認する

自力で排泄の場所まで行けなくなってきたら、おむつや吸水シートを使うこともあります。それ自体は珍しいことではありませんが、濡れたままの時間が長くなると、皮膚の赤みやただれにつながることがあるといわれています。

  • 排泄後はなるべく早めに取り替える
  • 汚れた部分はやさしく拭く
  • 必要に応じてぬるま湯で流し、しっかり乾かす
  • 赤みや湿りが続かないか確認する

強くこすると刺激になることもあるため、こすって落とすというより、やさしく整える感覚のほうが向いているようです。

口元や被毛の清潔も、見落としにくくしたいポイント

流動食やウェットフード、水分補助のあとには、口元に汚れが残りやすくなることがあります。また、自分で毛づくろいしにくくなると、被毛が乱れたり、汚れがたまりやすくなったりすることもあるようです。

毎回きれいに整えようと頑張りすぎなくても、口元を軽く拭く、ブラッシングを短時間だけする、蒸しタオルでやさしく整える、といったことでも、過ごしやすさにつながることがあります。

「家で様子を見る」より先に、相談したいサイン

呼吸の変化は、早めに相談したいことが多いといわれています

看取り期には、昨日までできていたことが急に難しくなることがあります。なかでも、呼吸の変化は見逃したくないポイントとして挙げられることが多いようです。

  • 呼吸がいつもより速い
  • 体全体を使って苦しそうに呼吸している
  • 横になると苦しそうで休めない
  • 首を伸ばすような姿勢が増える
  • 呼吸のたびに強くお腹や胸が動いている

こうした様子があるときは、家で様子を見るより、早めに動物病院へ連絡したほうがよいとされています。

食事や水分の介助で迷うときも、無理を続けない

食べ物や水をうまく飲み込めない、口から与えるとむせる、何をしても強く嫌がる、という場合は、家で頑張り続けるより、やり方そのものを相談したほうが安心しやすいようです。

また、嘔吐や下痢が続く、痛みや不快感で休めない、急に反応が鈍くなる、けいれんのような様子がある、といった場合も、自己判断だけで様子を見ないほうがよい場面があるといわれています。

迷ったときは、「その子らしく過ごせているか」を見直す

完璧な介護より、日々の穏やかさを見ていく

看取り期には、正解がひとつに決まっているわけではありません。そのため、「前より食べられなくなった」だけで判断するのではなく、その子が全体としてどう過ごせているかを見ていくことが大切だとされています。

  • 少しでも眠れているか
  • 水分や食事を無理なく取れているか
  • 苦しさや痛みが強くなっていないか
  • 排泄や清潔をある程度保てているか
  • 表情がやわらぐ時間がまだあるか

こうしたことを短くメモに残しておくと、獣医師に相談するときにも伝えやすくなりますし、ご家族自身も変化に気づきやすくなるようです。

完璧にできなくていい、という前提で考える

看取りの時間は、知識だけでは支えきれないことがあります。もっと上手にできたのではないか、もっと早く気づけたのではないかと、自分を責めたくなることもあるかもしれません。

でも、本当に大切なのは、すべてを完璧にこなすことではなく、その子が安心できる人のそばで、できるだけ苦しさの少ない時間を重ねられるようにすることだと思います。

寝床を整えること、水を飲みやすい位置に置くこと、体をやさしく拭くこと、苦しそうなサインを見逃さず相談すること。そうした一つひとつは小さく見えても、看取り期のその子にとっては大きな支えになるといわれています。家で過ごす時間を大切にしたいと思ったときは、ご家族だけで抱え込まず、かかりつけの獣医師と一緒に、その子に合った形を探していけると安心です。

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